家具の魅力を
もっと。
家具職人 宮城 真一
人は家具を選んでいるようで、
本当は暮らしを選んでいる。
取材・構成 イワブチシンジ
編集前記
人は家具を選んでいるようで、本当は暮らしを選んでいる。朝、テーブルを囲む時間。
子どもの成長を刻む椅子。家族の会話が生まれるキッチン。家具は、人生の背景であり、日々を静かに支える存在だ。
SYNC Furniture代表・宮城真一さんは、家具をつくる職人である。しかし、その仕事は木を削ることだけではない。
依頼主の暮らしを知り、その人らしい時間を形にする。一脚の椅子、一枚のテーブルの先にある人生を思い描きながら、今日も木と向き合っている。
第一章 幼少期
「好き」が芽吹いた少年時代。
ものづくりが特別好きだったわけではない。しかし、手を動かし、考え、形にすることへの興味は、幼い頃から自然と何故か 身についていた。父親の影響で、公式テニスに打ち込み、仲間と笑い、何気ない日常を過ごした小中学生時代、学校の勉強成績は良く、高校は、地元から少し離れた進学校と言われる高校に進学、高校時代も、地元公式テニスのクラブチームに所属、 その頃はまだ、自分が家具職人になるとは想像もしていなかった。ごくごく普通の子供で、けれど、人生は思いもよらない出会いによって、大きく方向を変えていく。
第二章 分岐点
高校時代、一人の先輩との出会い.
高校時代、親しくしていた一つ年上の先輩がいた。卒業を控えたある日、その先輩は真っ直ぐな目で言った。「俺はフレンチのシェフになる。」その言葉に応えるように、宮城さんは笑いながら答えた。「じゃあ、その時は僕がお店を設計します。」何気ない青春の会話だった。しかし、その約束は心のどこかに残り続ける。人は時に、一瞬の約束が人生の進路を決めることがある。 その後、難関と言われる国公立山口大学建築系学部に合格する。
第三章 転換
建築ではなく、家具だった。
「最後まで自分でつくる」という答え、 何気ない青春の約束を果たすため、建築を学ぶ道へ進学した。大学では建築だけでなく、空間やデザイン、感性について幅広く学び、その中で出会ったのが家具づくりだった。建築は、多くの職人や技術者が関わる分業の世界。一方、家具は違う。自身で設計し、木を選び、削り、組み立て、仕上げまで、自分一人で責任を持つことができる。「自分の手で最後までつくりたい。」 その想いが、建築から家具へと進路を変えた決定的な理由だった。
第四章 退路を断つ
職人になるという覚悟。
大学卒業後、就職活動はしなかった。 スーツも買わなかった。目指す場所は企業ではなく、家具工房だった。全国の工房を訪ね歩き、「給料はいりません。住み込みで働かせてください。」と頭を下げる。今思えば無謀だったかもしれない。それでも、退路を断つことでしか、本物の職人にはなれないと思っていた。若さゆえの勢いではなく、自分自身への覚悟だった。
第五章 修行
家具の街・大川で学んだこと。
修業の地として選んだのは、家具の街・福岡県大川市。そこで待っていたのは、想像していたような厳しさだけではなかった。 親方も先輩たちも、仕事には妥協しない。 しかし、人を育てることにも真剣だった。 木の性質。道具の使い方。一つひとつの工程。そして何より、「仕事に誠実であること」。技術だけではない、職人としての姿勢を教わった日々だった。 親方・師匠と 気がつけば、九年間。
第六章 独立
SYNCという思想。
家具ではなく、暮らしをつくる、 独立後、自らの工房に「SYNC」という名前を付けた。SYNCとは、「同調する」という意味。職人の想いと、お客様の想い。デザインと暮らし。家具と空間。そのすべてが調和して初めて、本当に良い家具になる。だから宮城さんは、家具だけを提案しない。暮らし方を聞き、家族の時間を想像し、その家だけの答えを探し続ける。 家具づくりとは、暮らしづくりなのだ。
第七章 約束
約束は、二十年越しに叶う。
プロとして再会した日。 高校時代、「店をつくる」と約束した先輩 その先輩は、本当にフレンチシェフとなり、自身の店を開いた。そして宮城さんは、その空間づくりを任される。店内に並ぶ家具。そこに流れる空気。高校時代の二人が描いた未来は、静かに現実となっていた。夢は、大きく語るものではない。積み重ねた時間が、いつか形になるものなのだ。 今も当然ながら交流があり、互いに良い距離間と関係らしい。
第八章 これから
手仕事の未来。
暮らしを、次の世代へつなぐ。 時代は効率を求める。AIが設計し、機械が加工する時代が訪れている。それでも、人の手だから生まれる温もりはなくならない。木には一本一本違う表情がある。 暮らしにも、一つとして同じものはない。 だからこそ、職人が必要なのだ。宮城さんが目指しているのは、家具を残すことだけではない。人の暮らしに寄り添い、世代を超えて愛される家具を通して得られる豊かな時間を残すこと。家具は完成した瞬間ではなく、何故なら家具は、使われ始めたその日から、本当の物語が始まるのだ。
〒807-0022 福岡県遠賀郡水巻町頃末北2-12-1 Tel:093-201-5080 Fax:093-863-0805
- CLASSTA
- SYNC Renovation Real Estate Sales [kitchen]
- SYNC Renovation Real Estate Sales [dining&libing]
- SYNC Renovation Real Estate Sales [dining]
編集後記
木は、人より長く生きる。
家具は、ただの道具ではなく、その家族が過ごしてきた時間や、これから積み重ねていく日々を、静かに見守り続ける存在になる。
宮城さんの仕事は、単に木を削り、形を整えることではない。
そこに暮らす人が、どんな朝を迎え、どんな会話を交わし、どんな思い出を重ねていくのかを想像しながら、その時間を受け止める器
をつくることだ。暮らしに寄り添うということは、目の前の使いやすさだけを考えることではない。
十年後、二十年後、その家具がどんな表情になっているのかまで思い描きながら、人生そのものに寄り添うことでもある。
一本の木が、一つの家具になり、その家具が家族の食卓を支え、会話を生み、記憶を刻んでいく。
やがてそれは、ただの家具ではなく、その家にしかない思い出の一部になっていくのだ。そうして積み重なっていく時間こそが、
宮城さんの考える職人の仕事であり、ものづくりを超えた、生き方そのものなのだ。
素晴らしく、羨まくもある。